旧 Sega AM3 研 であるところの *Hitmaker が、1999 年に業務用ドライブアクションゲームとしてリリースしたこの "Crazy Taxi" (以下 … CT) は、西海岸風の坂と海の街でオープンタイプのイエローキャブを操って、限られた時間の中で次から次へと客を乗せては目的地まで駆け巡る…という単純明快な内容でヒットしたタイトル。Dreamcast をはじめとするコンシューマ機にも移植され、元祖である業務用と共に続編を重ねることになる。

*Hitmaker (ヒットメーカー) ...
2000 年の Sega 経営再建事業の中の開発部門分社化に伴い独立。その後 2004 年 07 月 01 日に再度 AM3 研として Sega へ統合。

上記内容同様に操作系統も単純明快そのもので、使用するのはステアリングとドライブもしくはリバースのギア操作、そしてアクセルとブレーキのみ。しかしこれらを組み合わせたコマンド操作によって、例えば

ペダル未踏の状態でギアを D > R > D と切り替えると同時にアクセルを踏み込めば、超強力な加速が得られる "Crazy Dash" を発動

といった具合の、いくつかのテクニックも使用できる。これらテクニックの使用は、制限時間の節約や客からのより多い報酬に繋がるもので、ゲーム攻略に欠かせないものとなってくる。

この PC 版では、先行の DC 版同様のオリジナルマップを走る "Original" と、ミニゲーム形式で操作の習得やハイスコアの更新が楽しめる "Crazy Box" のモードも用意され、さらに独自要素としてはメインモードプレイ時のゲーム音楽の一新と、最大 1280 x 0960 px まで (公式サポートは 1024 x 0768 px まで) の高解像度への対応、といったものがある。

最初に言ってしまえば、ちょっと残念な壱本。別に CT 自体は悪くない。いちおう僕自身も DC 版の弐作目まではやりこんだ人間だ。しかしこの PC 版、フタを開ければ実質ただの DC 版ベタ移植。もしくはそれ以下か。

高解像度対応を謳っていても、その分テクスチャが新調されたわけでもなく、大きければ大きいほどにぼやけた世界が広がるだけ。
そして音楽。追加ならまだしも、ある意味かなめでもあった The Offspring 等の曲を完全排除し、他のバンドの曲に挿げ替えてしまったのはいったい何事かと。確かに曲調は似たようなメロディックパンクとはいえ "Ya Ya Ya Ya Ya" (All I Want by The Offspring) の聴こえてこない CT なんて辛すぎる。コレジャナイ感満載、かつて電気グルーヴが歌ったところの "買ってもらったアニメの主題歌のカセットテープ、歌ってるのはテレビとは違う全然知らない奴" ですよと。
オリジナルマップと Crazy Box なら DC 版で楽しめたし、やはり PC 版にもさらなる付加要素を期待させてほしかった。たとえば前述の高解像度テクスチャ追加や、充実したリプレイモードもしくはフリーライドモードの搭載。この程度ならば作業的にも多くを必要としないはずなのに、ただ音楽を差し替えただけで PC 版オリジナル要素を謳われては、それはヒット作の傲慢だとしか思えない。

実は CT に限ったことではなく、Sega コンシューマからの PC 移植に関してはこんな傾向が強かったりする。制作/販売側にもそれなりの都合があるのかもしれないが、マルチプラットフォーム全盛のこの時代、移植それ自体に価値を見いだすことは難しいと思うが、どうだろうか。

20041005

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