米 Valve 開発/販売、同社の Source Engine を使用した FPS である本作 "Left 4 Dead" (レフト・フォー・デッド) は、会心作 "Half-Life" (ハーフライフ) の 10 周年記念作品としての顔をも持つ、ある意味 Valve 渾身のタイトルである。
Win/OS X/X360 マルチプラットフォーム。2012 年 07 月以降、Win - Mac 間のクロスプラットフォームマルチプレイにも対応。

接触性病原体 "Green Flu" のアウトブレイクが米国ペンシルバニア州で発生。人間へ感染すれば凶暴化や肉体変異、脳機能の著しい損傷などを引き起こす。アウトブレイクから二週間後、ゲームの舞台となる都市 Fairfield (フェアフィールド) は感染者に埋め尽くされた。
しかし免疫によりその難を逃れたと思われる生存者たちもまだそこにいた。ベトナム帰還兵 William "Bill" Overbeck、大学生 Zoey、情報技術分析者 Louis、アウトロー Francis の四人だ。彼らはこの感染災害から逃れるため、団結して街からの脱出を試みる。

ゲームは街の通りから、地下鉄や下水道、病院などへと続く各面を、四人の主人公キャラクタの中のひとりとなって仲間とともに進んでゆくステージクリアタイプのもの。マップの各所にはスイッチ動作するドアなど数種のオブジェクトがあり、そうした地点にはまた多くの敵も配置されている。
プレイヤーが所持できる武器は下記のとおり。なお、武器を含むアイテム装備の可否をはじめ、各キャラクタ間には能力による差別化等はいっさいない。

Left 4 Dead Weapons

Primary

• Pump Shotgun
• Submachine Gun
• Auto Shotgun
• Assault Rifle
• Hunting Rifle

Sidearm

• M1911 Pistol

Throwable Weapons

• Molotov Cocktail
• Pipe Bomb

サイドアームのピストルに限り、所持弾薬数が無限となるほか、二挺までの同時装備もできる。各銃器装備時には近接攻撃として、それを利用した殴打を繰り出すことも可能。ほかマップ中の各所には補充用の弾薬をはじめ、燃料容器やプロパンタンク、固定機銃といったものも使用可能なオブジェとして置かれている。
また携行可能なアイテムとして、ヘルス値回復用の First Aid Kit、暫定的にヘルス値を引き上げる (時間経過で使用前の値まで戻る) Pain Pills も存在する。これら回復用アイテムについては、自己使用はもちろん、傷を負ったチームメイトに対しての使用も可能。
これらの各武器および回復用アイテムは 1 - 4 までの専用スロットにそれぞれひとつずつ持つことができる。

主人公たちに対する敵キャラクタとしては、最も数多く存在する通常感染者の Infected、そして特殊感染者の Hunter、Smoker、Boomer、Tank、Witch たちが Horde と呼ばれる群れを形成してその行く手に立ちはだかる。
まだ人間の形を留めている通常感染者たちに対して、特殊感染者たちはそれぞれ変質した肉体を駆使した特異な攻撃法や高い体力攻撃力などを持っている。

このシナリオはシングル/マルチプレイヤー協力プレイで体験でき、シングルプレイ時には CPU が残りの三人を担当。プレイヤーの行動はゲームに搭載された AI Director 機能により診断され、プレイ毎にそのゲーム内容がダイナミックに変化するシステムとなっている。
また 4 on 4 の Versus、特定地点に立ち感染者の群れと闘い抜く Survival の各ゲームモードも用意されている。仲間とのコミュニケーション用に、クイックメッセージ、テキスト/ボイスチャットの各機能も完備。

ゾンビと化した感染者たちのひしめく街を生きて脱出できるか。この鍵となるのはプレイヤー各人のサバイバルスキル、そしてなにより行動を共にする四人のチームワークだろう。

最初に言ってしまえば、個人的には決定的にやる時期を間違ってしまったタイトル。ゲームデザインこそは異なるものの、同じ Post-apocalyptic な壱人称視点モノの "Dead Island" (デッドアイランド … 2011, Techland + Deep Silver) シリーズ体験後である。わかる人には察して頂けるだろう。

本項見出しに書いたとおり、とにかくシンプルに尽きるゲームデザインなのだ。
公式にはホラーアクションゲームとしても謳われているようだが、アクションゲームとしての要素は極めて少ない。まずは通常の FPS 同様の各種移動 (速度は通常と歩行の二段階) から、しゃがみ、ジャンプといった基本動作に、攻撃法としては銃器による銃撃および殴打と投擲武器使用、残るは回復アイテム使用と各所のスイッチ入れ程度である。
登場銃器の種類も少なければ、スコープ付のハンティングライフルを除いては、アイアンサイト等を使用した精密射撃もできない。シューターとして見ても寂しい仕様。Valve 製品だけあって FPS として最低限の基礎こそ押さえられてはいるものの、それ以上を求める場合には厳しい出来映えだとも言える。

敵にしても同様。通常感染者たちでさえも群れをなしてはひたすらハイペースでこちらへ駆け集まってくる。迫りくるゾンビたちをいたってシンプルに撃ち倒して、いたってシンプルにゴールを目指して…の繰り返し。AI Director 機能によるゲーム内容の変化があるとは言えど、進行ルートやマップ内容にまでその影響は及ばない。
また非常にもったいなく感じたのは、ゲーム概要の項でも軽く触れたように、せっかく四人も揃った主人公たちがプレイ内容にまで及ぶほどの個性を持たないこと。ムービーシーン (フィルム映画同様、秒間 24 コマで動くことには細かなこだわりを感じた) 中の彼らは活き活きと描かれているだけに、どうにも残念な点である。

あくまでマルチプレイのためのコミュニケーションツールのひとつとして楽しむべきタイトルなのであろうと私は感じたが、本作を含む L4D シリーズが高い支持を多く得ているのもまた事実。
本作の好評を受け、きわめて直ちに開発/リリースされた続編である "Left 4 Dead 2" (Nov 17 2009) では近接攻撃用武器の充実をはじめ多くの追加改善がなされているようなので、本ゲーム同様のシチュエーションをサバイバルアクションシューターとしてより深く楽しみたいならば、本作よりもそちらを選んだほうが間違いはないだろう。

20161002

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