City of Angels こと、米カリフォルニア州 Los Angeles の街を 620 km² にもわたるマップで再現、特捜刑事となって広いこの街に起こる犯罪に立ち向かう 3D アクションアドベンチャーゲーム。徒歩でのフリーロームのほか、ドライブ (四輪限定) に射撃、格闘といった要素も組み込まれている。
2003 年 11 月の北米 PS2/Xbox 版リリースを皮切りに、続いて NGC にモバイルフォン版、そして PC/Mac と多プラットフォームで販売展開された。

プレイヤーキャラクタとなるのは、Nicholas "Nick" Kang Wilson (ニック・カン・ウィルソン … 以下 Nick) という中華系アメリカ人。格闘や射撃など、現場刑事としての技能に非常に長けてはいるが、併せ持った型破りな捜査方法から上司や同僚との軋轢を生むことも多い青年刑事。
物語は、停職中にある Nick が LAPD の射撃訓練場を訪れるところから始まる。訓練場の係員は、Nick と同じく刑事であった彼の父 Henry Wilson (1970 年代に謎の失踪を遂げている) の友人であった老警官 George。息子に対するように Nick にもまた優しい。そして射撃訓練。得意の二挺拳銃でペーパーターゲットを撃ち尽くしたところに、ひとりの黒人中年女性が現れる。
恰幅のよいこの女性の名は Wanda Parks。LAPD の主任にして、新設された精鋭捜査部 "Elite Operations Division" (以下 E.O.D.) の長でもある。変わらぬ Nick の鋭さを見抜いた彼女は、最近チャイナタウンで起こっている連続爆破事件捜査への協力を Nick に持ちかける。Wanda は今回の事件の陰に Triad (三合会 … 香港等を拠点とする中華系犯罪ネットワーク) の存在を感じており、彼らに近い血を持つ Nick が捜査に適しているとも考えている様子だ。
その後訓練場から E.O.D. 本部へのドライブを経て、Nick は Wanda と再会。そこで彼女より今回の捜査における新パートナーとして Rosie Velasco という若い女性を紹介される。Nick の叩いた軽口に対して、長くギャング犯罪へ携わってきたキャリアを持つ彼女は強く反発する。けっして良いものとは言えないこの出会いの後、Wanda はふたりでの食事を提案。
二人のパートナーがしぶしぶ向かったのはチャイナタウンのとあるレストラン。なかなか打ち解けないふたりの会話の最中、店の隅では Triad に関連していると思われる若いちんぴらが、店主に高額なみかじめ料を要求、恫喝していた。ここで Nick は「今日は俺のラッキーデイだ」と Rosie に告げ、ちんぴらの頭部めがけて鋭く箸を投げつけた。

ここまでが序盤…、とはいっても、訓練場での射撃や各目的地へのドライブはプレイヤーの操作によるものとなる。
レストランでのトラブルをきっかけに、結局 Nick はチャイナタウンにはびこる Triad、そしてさらにその背後にうごめくロシアンマフィア等といった都会の大きな陰へと足を踏み入れてゆくことになる。
フリーロームで気ままに広大なマップをうろつくことも可能だが、既定の任務をこなしてゆく事により、上記の話の流れに乗った八つのエピソードでシナリオは進んでゆく。後述する Good/Bad Cop パラメータの値によるシナリオの分岐も二カ所あり、エンディングとしては Good/Average/Bad の三つが用意されている。
フリーローム中は、徒歩または車での移動が可能。通りにはひとびとが行き交っているが、ここで Nick は彼らを任意に尋問 (ボディチェック) できる。結果彼らから違法な薬物や武器を発見できた際には、Good Cop としてのポイントが Nick に加算される。
また、メインシナリオの犯罪捜査の他にも、随時リアルタイムに事件は頻発する。けちなひったくりや街頭での喧嘩から、武装したギャング同士の抗争や人質事件等まで、そのバリエーションは多岐にわたる。これらメイン以外の事件の解決は必須ではないが、解決に成功することができればまた、件の Good Cop ポイントが入る。
Good Cop... ということは、もちろんそれに対するステータスとして Bad Cop というものも存在する。誤射や運転の失敗等で非武装の民間人に手をかけてしまったり、たとえ武装した犯罪者が相手でも容赦なく頭部を打ち抜いてしまえば、Good ポイントは減算。それがある程度の量を超えてしまえば Nick は Bad Cop となり、前述したシナリオの自動分岐が発生する。
固定装備品の二挺拳銃は弾数無制限だが、Nick および彼の乗る車 (所有のパトロールカーに限らず、そこらの民間人の物も拝借可能) にはヘルスポイントがあり、Nick 自身が倒れれば稼いだポイントの消費、車であればタイヤの破裂や車体へのダメージ蓄積からの爆発炎上といったことが起きてしまう。マップ中に点在するドラッグストアでは Nick 自身のヘルスを、ガソリンスタンドでは車体のダメージを、そして駐車場へ駆け込めば Nick および所有パトロールカーの両ヘルス値ともに全回復できる。ただし駐車場以外の施設では、蓄積したポイントを対価として払わねばならない。
また武器については、常時携行できる二挺拳銃のほか、犯罪者たちが取り落とした鈍器や刃物、重火器などを拾い、テンポラリなものとして使用することもできる。銃器発射時には前後左右いずれかの移動キーを押しながらジャンプキーを長押しすることによって、時間をスローモーションにしながらのドッジジャンプ体勢から射撃することもできる。

Nick の基本装備としては、例の二挺拳銃に覆面仕様のパトロールカー、加えて彼の持つ体術の三つがある。徒歩中にはデフォルトで数字キーの 1/2/3 それぞれを押すことで、格闘/通常移動/射撃のスタイル切替ができる。
マップ中には 24/7 と名を冠された訓練施設が点在し、Good ポイントを積み重ねることによって取得できるバッジと引き換えに施設へ入り、特定の条件を満たす行動によって拳銃/運転/体術各スキルのパワーアップが行なえる。例えば拳銃であれば精密射撃やファストリロードが可能になったり、レーザーポインタ等のオプションを追加できる。運転ならば急発進や高角度ターンといった技術が、突き/蹴り/飛び蹴り/投げを基本とする体術ならば特殊技の習得がそれぞれ行なえる。
また、各エピソードをコンプリートした際にはフリードライビングモードが用意してあり、自由に町を徘徊できる他、上記の三スキルのうちいずれかひとつを、口径の大きい拳銃への持ち替えや、パトロールカーの車種追加、そしてさらなる体術の習得等、24/7 施設のものとは別扱いでアップグレードできる。

発売時期およびスクリーンショットを参照されればわかるとおり、GTA III フォロワー色がまず濃い。ただ、あちらが犯罪者を主人公に据えていることに対し、こちらは警官…と、クライムアクションゲームとして逆の視点を見出した点は面白い。不審人物へのボディチェックや声を上げての E.O.D. バッジの掲示、威嚇発砲等、いかにもな気分に浸れる。我が道をゆきながらも、身内への愛や彼なりの正義感を持ち続ける Nick Kang さんへの感情移入もある程度できる。
ただなんというか、色濃い複数の展開を持つシナリオの良し悪しは別として、アクションアドベンチャーとしての部分はどうにも薄く感じる。LA の主な道路はそこに再現されているのかもしれないが、広大なだけで似たような建物がのっぺりと並ぶ街路、おもちゃのような挙動の各種車両、ガチャプレイでなんとかなる格闘。要は欲張り過ぎた部分があるのではないだろうか。この状態を豪華と捉えるか混沌と捉えるかと問われれば、私は後者を選ぶだろう。各要素を多少削ってでも、アクション、またはアドベンチャーゲームとしての密度がもう少し欲しいところ。

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