1993 年に MS-DOS 用ゲームとして発売され、それまでに類を見なかった3D シューティングとして全世界でヒット、FPS というジャンルの金字塔となった Doom を、現在の技術でリメイクした作品。
制作はもちろん、旧 Doom とその前身とも言える Wolfenstein 3D シリーズや、ゲーム世界に SF 要素を大きく取り入れ、更にアクション性の増加やマルチプレイへの特化などの進化を遂げた Quake シリーズなどの開発を手がけてきた FPS 界の絶対的存在、米 id Software。本作の制作にあたっては四年の期間と 1,400 万ドル以上の開発費が投じられた。

ゲーム内容は旧作同様、近未来の火星基地に降り立ったひとりの Space Marine (宇宙海兵隊員) であるプレイヤーキャラクタが、そこへ侵略してきた異形の怪物の群れに立ち向かう…というものになっているが、前作の舞台が火星の衛星であったのに対し、本作のそれは火星本土になっていたりと、細かい設定等が異なるパラレルストーリー的な位置付けになっている。
また、ゲームエンジンは本作のために新調 (id Tech 4) され、ピクセルシェーダやリアルタイムのライティング処理等最新の描画技術が取りこまれている。

オリジナルの持つアクション性に、ホラー的要素を大きく加えた上記シングルモードのほか、四人まで参加可能なマルチプレイヤーモードも搭載。さらには Mod 制作用にマップのソースデータも同梱されている。この PC 版のほか、2005 年 04 月北米発売予定の Xbox 版 (独自要素として Xbox LIVE サービス使用による co-op モードに対応) なども。

発売時にはとりあえずデモ版をプレイしたものの、しばらくそれきりだったが、遅れに遅れて最近やっとリテール版をひととおり遊んでみたので少し感想を。

最も大きな印象としてはやはり "暗い" のひと言。えんえんと続く闇の中でおもむろに襲いかかってくる敵を警戒し、おっかなびっくり歩を進めることを余儀なくされるということは、想像以上にストレスが溜まるものだった。
ゲームとしてのスタイルなのだろうが、主人公がフラッシュライトと武器を同時に装備できないというのはどうにも解せない。
インプにはじまる懐かしのモンスター達の再登場にニヤリとさせられる…という、ある意味同窓会的な楽しみはあるものの、初代とその系統作品にあった "熱い闘い" 的な物はここにはなく、旧シリーズの力押し系アクションが好きだった者にとってはただ辛い。
旧作より最下層の雑魚敵として出演のゾンビ達は、アクションゲームの敵キャラクタというよりも、海の向こうでも好評価を得ている Resident Evil (バイオハザード by Capcom) シリーズにも代表されるスタイル (元はロメロ映画か) 寄りとなり、暗闇からのっそりと姿を現わしたり、通路の先で共食いをしていたりといった姿が印象的。しかし対照的にゾンビ以外の往年のモンスターの多くは、全体的にスピードアップ傾向にあるようで妙にフットワークが良くなっており、プレイのテンポはとにかく落ち着かないものだった。

そんなわけでホラーゲーム方面へ中途半端に足を突っ込んだ感が大きく、さらに度重なる発売延期のあげくグラフィックをはじめとする新エンジンの魅力もなんとなく薄れ…と、個人的にはやや残念な印象の方が強いタイトルだった。
はじめに書いたように、デモ版をプレイした際も即購入に至る程の魅力をそう感じず、今回改めてプレイに臨んだというのも、漠然と "やっぱりやっとかなきゃダメかな" といった思いがどこかであったからだ。初作との出会いで人生を変えた者にとっての気持ちの区切りとして。
ただ、旧シリーズに拘らずにコレはコレとしてプレイするならば、ゲームとしてのクオリティはそれなりのものだろう。細部まで作りこまれた火星基地のレベルデザインや、E-mail や音声/動画を扱える PDA の存在など、面白い部分はいくつかあった。

ヒット作の幻想というか呪縛というか、そういったものにとらわれていてはゲームを楽しめない…と、私にはいろんな意味でそう感じさせられたタイトル。

20060526

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