当初 RtCW 拡張パックとしての発売を視野に入れて開発されたが、シングルモード開発の頓挫をきっかけに、RtCW からは独立した (単体インストールでプレイ可能) マルチプレイのみのフリーウェアとしてリリースされることになったのが、本作 Wolfenstein: Enemy Territory だ。

開発にあたったのは、Quake III: Arena (Q3A) や Counter-Strike、そして RtCW のマルチプレイヤーマップデザインを手がけた実績を持つ英 Splash Damage。ヨーロッパとアフリカの二つの戦線を舞台としたマップがそれぞれ三つ、合わせて六つのマップがデフォルトで楽しめるほかに、本体同梱ではないが、公式リリースされているマップエディタで作成されたユーザマップも楽しめるようになっている。
RtCW と同じく id Tech 3 (Q3A) エンジン使用。この Windows 版のほか、Linux/AROS/Mac (Universal)/MorphOS といった他 OS 用版も存在する。

ゲームの舞台は RtCW 同様、WW II における連合軍対枢軸軍の戦いを描いたものだが、一新されたマップラインナップに加え、ゲームシステムも部分的に新しいものに変化している。
まずはクラス。前作にあった四種を基本に、Lieutenant (ルテナント … 尉官) は名称が Field Ops (フィールドオプス) に変わり、さらに新クラスである Covert Ops (カバートオプス) が追加された。
名称が変わった Field Ops については特に変更点はなく、前作同様アモパック配布と砲撃 + 空爆要請のスキルが使える。Covert Ops は言うなればスパイで、所持武器 (銃はルガーにステン、ライフルなど) にはサプレッサを装備、他に地雷発見用の双眼鏡、煙幕とリモート爆弾を装備。さらに倒した敵のユニフォームを奪って変装 (敵視界内で攻撃をすると自動的に解ける) も可…と、敵陣深く潜入しての活躍が期待できる新クラスだ。
他の既存のクラスについても、ソルジャーには新武器である携行型 MG42 や迫撃砲、メディックには一時的に自らの身体能力を上げるアドレナリン注射、エンジニアにはグレネードライフルや地雷埋設 + 撤去能力…といった具合に、数多くの特徴が追加された。

そしてシステム最大の変更点ともいえるのが、XP (経験値) システムの導入。敵との戦闘や、味方の救助、そしてマップオブジェクトに関連する行動をとる事で、

上記表中の各スキルがそれぞれ四段階にアップする。レベルアップの暁には、例えばライトウェポンのスキルなら "所持弾薬数の増加" や "二挺拳銃装備" などの効果があり、個人個人が各スキルをまんべんなくレベルアップすれば、それは間違いなくチーム自体のパワーアップに繋がる。そしてまたゲーム中のクラスチェンジは自由に行なえるので、余裕があれば各クラスの固有スキルを上げ尽くすことに挑戦してみるのもいいだろう。

Q3A から続く正統派アクションとしての血統と、RtCW で生まれたクラスによるチームプレイの重要性。これらを総合的にパワーアップさせた本作が完全なるフリーウェアとして提供されているなら、あえてそれを避けるという道はないはずだ。最近の流行である "乗り物" がない (NPC 操作の戦車やトラックは存在する) という部分もあるが、前述の各要素がいずれも高い完成度を誇ることに変わりはない。

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